小国町(熊本県)

全30世帯の住⺠で作る地熱発電所 〜循環型経済の実現へ〜

①課題   
過疎化が進むわいた地域では、地域の行事(野焼き、清掃、盆踊り、祭事など)を行うことが困難になりつつあります。そこで、地域の資源である地熱を用いて地熱発電を行うことで、地域の活性化につながる可能性があるため合同会社わいた会を設立しました。しかし、一部住⺠は、 地熱発電を行うことで、温泉資源の枯渇を危惧して地熱発電に難色を示していました。  
②解決策   
合同会社わいた会は、地熱発電を行うことで地域の活性化と温泉資源の保全を両立させようという思いがあり、資源が枯渇しないように定期的にモニタリングを行い、地熱発電所のコントロールはわいた会が決定し、収益の一部を地域のために活用することを掲げ丁寧に説明しました。  
③結果   
合同会社わいた会は、地熱発電事業を始めることができました。わいた地域の全30世帯は、合同会社わいた会の役員となり、収益の一部を公⺠館や観光地の整備に充てました。地元有志の女性は、整備された公⺠館で地域の食材を使っておこわや饅頭を作り始めました。これにより、わいた地域には循環型経済が生まれました。

観光地の説明(DESTINATION DESCRIPTION)

わいた地域は、熊本県⼩国町のシンボルわいた⼭の裾野にある温泉地です。  
⼩国町は、阿蘇の北部に位置し、阿蘇ジオパークで⼈気のジオサイト1つである鍋ヶ滝という観光スポットがあります。わいた地域は、集落の⾄る所から地熱蒸気が上がっていて、5軒の温泉旅館と3軒の⽇帰り温泉施設があり、観光地として⼈気があります。わいた地域の住⺠は、⽇頃から地熱を利⽤し、料理や乾燥施設、お⾵呂、暖房などに活⽤しています。  
わいた地域の⽇帰り温泉は、貸切⾵呂が⼈気でお⾦を⼊れると新しいお湯が⼊るシステムがとてもユニークです。また、地獄蒸しといって蒸し場で野菜などの⾷材を蒸して⾷べることもできます。蒸気が沢⼭出ているエリアは、写真撮影スポットとして⼈気があります。 わいた地域は、地熱資源が豊富で、観光地としても⼈気がある魅⼒的な地域です。

直面した課題(ISSUES FACED)

以下の様な課題がありました。  
・過疎化で地域の活動がうまく回らなくなっていた。  
・⾼齢化や若者が外に働きに出ることによる⼈⼝減少。  
・蒸気が⾄るところで出ているため、観光客に危険なところがある。  
・地熱を有効活⽤できていない。  
・合同会社わいた会に賛同できる地熱発電を運⽤できるパートナーが必要。

課題解決の対策方法、ステップ、ツール(METHODS, STEPS AND TOOLS APPLIED)

以下のような内容を合同会社わいた会の定款に⼊れ、全30世帯の合意を得られ、発電事業をおこなうことができた。  
・地域を維持するため、地域資源である地熱で地熱発電事業を⾏い、その収益の⼀部で観光地や地域の整備を⾏ったり、⼈⼿が必要な⾏事などはアルバイトを雇ったり循環型経済の確⽴をおこなう 。  
・地下資源が枯渇しないようモニタリングを⾏う。  
・合同会社わいた会が地熱発電所の稼働コントロールできる。  
 2011年 合同会社 わいた会を設⽴ (26世帯) ふるさと熱電株式会社をパートナー企業として選定  
 2015年 わいた地熱発電所 稼働 全30世帯が⼊社 モニタリング  
 2020年 地熱資源活⽤協議会に係る協定の締結(⼩国町)  
・モニタリング ⽣産井と還元井を合わせた13ヵ所で温度、圧⼒、流量、EC、成分分析などのモニタリングを ⾏っている。また、モニタリングの結果は、⽉に1回定例会で報告を⾏っている他、常時スマートフォンなどでも閲覧できる。  
・地熱資源活⽤協議会に係る協定の締結 ⼩国町と地熱事業者5社は、⼩国町地熱資源活⽤協議会に係る協定を締結。 この協定は、地熱開発を⾏おうとする事業者並びに既存の温泉事業者及び地域住⺠の理解と連携ものと、適正な地熱資源の活⽤を推進することにより豊かな未来を創造することを⽬的としています。  
具体的な協定の内容は、・共通モニタリングの実施、独⾃モニタリングの報告義務について・ 地域振興策や事故発⽣に対応するための地熱の恵み基⾦制度の確⽴について・地熱開発事業から⽣じた損害を賠償する保険への加⼊について・保険に加⼊できない場合等の代替措置について、 以上を取り決めました。(⼩国町HPより抜粋)

成功の主要因(KEY FACTORS FOR SUCCESS)

このプロジェクトは、下記のステークホルダーとの連携により実現しました。  
・合同会社わいた会(地域住⺠ 全30世帯) 住⺠の地域への思いにより、合同会社わいた会が設⽴されました。  
・ふるさと熱電株式会社 わいた会の経営⽅針に沿ったパートナーとして、わいた地熱発電所の運営を⾏っています。 また、温熱ハウスによるバジル、ミントの栽培(わいた会から引き継ぎ)

得られた知見(LESSONS LEARNED)

直面した課題は以下の通りです。  
・合同会社わいた会を設立するにあたり、明確な提案内容ていねいな説明を行い全30世帯で合意を得られた。  
・温泉資源の枯渇を危惧している。 →定期的な温泉資源のモニタリングを行い月1回の定例会やスマートフォンでモニタリング結果の情報共有を行っている。

成果と実績(RESULTS AND ACHIEVEMENTS)

プロジェクトの主な効果は以下の通りです。  
・地下資源のモニタリングにより、温泉資源および観光地を守れています。  
・収益の⼀部でわいた地区の整備が⾏われました。  
 →地熱の蒸気が出る危険な地帯を整備しました。  
 →蒸し場を整備し、利⽤料を取る仕組みを作りました。  
 →公⺠館の整備では、地域の⼥性が調理室を利⽤し新しい事業を始めました。  
 (地元の伝統的な⾷⽂化に寄与(⼭菜おこわ、饅頭))  
・新規店舗がオープンしたり、これまで無かったイベントが開催され地域の活性化が⾒られます。  
・Uターン(2⼈)がありました。  
・住⺠の所得において、本業にわいた会の給料がプラスされました。  
・雇⽤の場が⽣まれました。(地熱発電所、温熱ハウスなど)  
・地熱発電時に発⽣するお湯が全世帯に分湯されています。

他地域でのヒント(TIPS FOR OTHER DESTINATIONS)

・地域全世帯で会社を設⽴し、地熱発電の運⽤は外部委託することで、地熱資源の状況により発電をコントロールできる仕組みが重要。(地域の意⾒が⾔える仕組み)  
・定例会を開催し(わいた会では⽉1回全体会、週1回執⾏役員会)、発電状況や地熱資源のモニタリング情報を共有し、全世帯に当事者意識を持たせることが重要。  
・地熱発電による収益の⼀部を地域や町に還元し、町の活性化の⼀助にする。